旅行業界の給料・年収はどのくらい? 他業界との比較で見る転職・就職のポイント

旅行業界に就職・転職を考える際、やはり気になるのは「給料」の話ではないでしょうか。

一般的に「給料が安い」と言われる業界ですが、実際のところはどうなのでしょうか?

結論から言うと、10年間旅行会社で働いた筆者の実感としても、やはり給料は安めです。しかし、それ以上に大きなやりがいや魅力があるのも事実です。

本記事では、旅行会社に就職・転職した場合の給料や年収の目安、業界のリアルな事情を詳しく解説します。

さらに、給料が安くても働く価値があると感じる理由や、旅行業界ならではのメリットについても紹介します。

旅行業界への就職・転職を目指す方はぜひ最後まで御覧ください。

旅行業界の平均年収は「約393万円」

始めに、旅行業界の平均年収の実態について解説します。

年収に関するデータは上場企業であれば、有価証券報告書から見て取ることが可能です。一方で旅行業界の場合、株式市場に上場していない、大手グループ傘下の子会社として営業しているため年収が不明といったケースが多いです。

そのため今回の調査では、社員のよる会社の評価・口コミなどを掲載している「OpenWork」のデータを元に旅行業界の平均年収の算出を行いました。

Opne Workに2025年3月時点で掲載されていた、各旅行会社の平均年収は以下の通りです。

会社名平均年収
JTB451 万円
エイチ・アイ・エス391 万円
KNT-CTホールディングス412 万円
日本旅行392 万円
阪急交通社424 万円
(株)ジャルパック509 万円
東武トップツアーズ(株)365 万円
(株)ジェイアール東海ツアーズ365 万円
名鉄観光サービス(株)357 万円
沖縄ツーリスト(株)326 万円
京王観光(株)333 万円
平均393 万円
参考:OpenWork

各社若干のばらつきはあるものの、11の主要旅行会社の年収を平均した結果は、393万円です。(ボーナス無しで月収として計算をした場合は、32.75万円です。)

口コミベースの計算とはなりますが、実際に働いていた筆者の感覚からも大きくズレている感触はなく、妥当な数字と判断できます。

また東証プライム市場に上場している、株式会社エイチ・アイ・エスが発行した有価証券報告書では、2023年10月31日の時点での従業員の平均年収は約443万円と公表されています。

従業員数(人)3,984 人
平均年令(才)37.8 才
平均勤続年数(年)13.3 年
平均年間給与(円)4,430,394 円
参考:金融庁|有価証券報告書|株式会社エイチ・アイ・エス:有価証券報告書 ‐ 第43期

産業別に見てみると、日本の平均「460万円」よりも低い

参考:令和5年分|民間給与実態統計調査|国税庁 長官官房 企画課

旅行業界の平均年収が400万円前後とわかったところで、日本全体の平均年収と比較をするとこの金額は高いのか・低いのかについて解説をします。

国税庁が発表している令和5年度(2023年度)の民間給与実態統計調査によると、日本の全産業の平均年収は460万円と発表されています。

以下の表は産業別の内訳で、「電気・ガス・熱供給・水道業」が最も高く775万円、旅行業界と密接に関わりのある「宿泊業・飲食サービス業」が最も低く264万円です。

この調査から、先ほど算出した11の主要旅行会社の平均年収393万円は、全産業の平均年収を下回っていることがわかります。

業種平均年収
電気・ガス・熱供給・水道業775 万円
金融業・保険業652 万円
情報通信業649 万円
学術研究・専門・技術サービス業・
教育・学習支援業
551 万円
建設業548 万円
複合サービス事業535 万円
製造業533 万円
運輸業・郵便業473 万円
不動産業・物品賃貸業469 万円
全体平均460 万円
医療・福祉404 万円
卸売業・小売業387 万円
サービス業378 万円
農林水産・鉱業333 万円
宿泊業・飲食サービス業264 万円

※注釈

上記の分類は「日本標準産業分類」に基づき調査が行われています。旅行業は「サービス業」の中の「その他の生活関連サービス業」に分類され、集計が行われています。

業種分類名業種の内訳
サービス業洗濯・理容・美容・浴場業、その他の生活関連サービス業、娯楽業、廃棄物処理業、自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、その他の事業サービス業、政治・経済・文化団体、宗教、その他のサービス業、分類不能の産業

旅行業界の年収が低い3つの理由

旅行業界の平均年収が日本の平均を下回っている少し残念な実態がわかったところで、なぜ年収が低くなっているのかその理由について解説をします。

業界全体の実態をしっかりと把握し、就職・転職を決める際のポイントにしていきましょう。

コロナ禍以降の、旅行需要の減少

参考:年別 訪日外客数, 出国日本人数の推移|JNTO(日本政府観光局)

旅行業界は、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた業界の一つです。2020年以降、各国の渡航制限や外出自粛の影響で観光業全体が低迷し、多くの企業が売上の大幅な減少に直面しました。

上記のグラフは、2014年〜2023年までの日本人旅行者の出国数の推移を表したものです。多くの人が知っての通り、新型コロナウイルスの発生以降、出国者数が激減し2023年時点でも2019年比の47.9%と半分程度の回復にとどまっています。

回復の遅れには、インフレによる物価高、円安ドル高などが影響し、生活必需品ではない旅行需要そのものが減少していると推測できます。

企業の業績が悪化すれば、当然ながら従業員の給与やボーナスにも影響が及びます。旅行業界は他産業と比較をすると、人件費を抑えざるを得ない状況が続いており、年収の低下や昇給の停滞が今も続いている現状です。

日本人出国者数2019年度比
2014年16,903,388 人
2015年16,213,789 人
2016年17,116,420 人
2017年17,889,292 人
2018年18,954,031 人
2019年20,080,669 人
2020年3,174,219 人15.8%
2021年512,244 人2.6%
2022年2,771,770 人13.8%
2023年9,624,158 人47.9%

薄利多売の利益構造

旅行業界はもともと利益率が低いビジネスモデルを採用しています。

旅行商品は価格競争が激しく、顧客にとって魅力的な価格を提供するために、企業は薄利多売の戦略を取らざるを得ません。

特にパッケージツアーや格安航空券の販売では、1件あたりの利益が非常に低く、大量に販売しなければ十分な利益を確保できません。

そのため、人件費や固定費の抑制が企業の経営課題となり、従業員の給料が上がりにくい構造になっています。

引用:阪急交通社公式サイト

各社のホームページなどを見てみると、価格を訴求した広告やキャンペーンなども多数見かけることができます。

また旅行会社は一般消費者向けの商品を扱うことが多く、1件あたりの単価もIT企業などのBtoBビジネスと比較をすると高くなりにくいと言った実情もあります。(個人で支払える金額にはある程度の限界があるため。)

売上・利益率の向上には、付加価値の高い商品や独自のサービスの開発が求められますが、それには時間と投資が必要で多くの企業が課題を抱えています。

他社との差別化が難しい

旅行業界は、多くの企業が同じようなサービスを提供しており、他社との差別化が難しい業界の一つと言われています。

例えば、航空券やホテルの予約は、多くの旅行会社が扱っているため、顧客にとっては「どこで予約しても大差がない」と感じられることが多いです。

その結果、価格競争が激化し、利益を確保するのが難しくなります。

また、ブランド力や知名度が高い大手企業が市場を占めており、中小企業が独自の価値を提供することが難しいのも要因の一つです。

このような状況では、従業員の給料を上げる余裕が生まれにくく、業界全体として年収が低めにとどまる傾向があります。

年収が低くても旅行業界で働くメリット5選

旅行業界は、平均的な年収が低いことは事実です。その一方で、年収は低いものの、旅行業界で働くメリットはたくさんあります。

ここからは、私が実際に10年間にわたり旅行会社で働いて感じた、5つのメリットについて解説します。

旅行に安く行ける

旅行業界で働く大きなメリットの一つは、社員割引や福利厚生を利用して、通常よりも安く旅行に行けることです。

旅行代理店や航空会社、ホテルなどの企業では、社員向けの割引制度を設けていることが多く、パッケージツアーや宿泊施設を特別価格で利用できる場合があります。

また、業務の一環として視察旅行が組まれることもあり、国内外の観光地を訪れる機会が増えるのも魅力です。

旅行好きな人にとっては、低めの年収でもこうした特典を活用することで、趣味と実益を兼ねたライフスタイルを楽しむことができます。

私も10年間の在籍中に、割引や研修を利用しヨーロッパやハワイなどに行かせていただくことができました。

若くして出世ができるチャンスが有る

旅行業界は実力主義の側面が強く、若手でも成果を上げれば昇進のチャンスがあります。

特に、営業や企画職では、売上目標の達成やヒット商品の開発が評価され、早期にマネージャー職に就くことも可能です。

また、ベンチャー企業や中小規模の旅行会社では、社員一人ひとりの役割が大きく、責任のあるポジションを任される機会も多くあります。

一般的な大企業に比べて年功序列の色が薄いため、20代からキャリアアップを目指す人には魅力的な業界と言えます。

また業界全体として平均年齢が低いのも、出世がしやすい理由の一つです。

海外勤務のチャンスもある

旅行業界では、海外の拠点や支店で働く機会が多くあります。特に、大手旅行会社や国際的なホテルチェーンでは、海外支店での駐在や現地法人の運営に関わるポジションが用意されています。

英語や他の外国語ができる人は、語学力を生かして海外でのキャリアを築くチャンスが豊富です。東南アジアなど日本語を学んでいる人の多い国の支店であれば、英語力がなくても赴任ができる場合もあります。

また、観光業界では、インバウンド需要の増加に伴い、外国人向けのサービスを強化している企業も多いため、国際的な仕事をしたい人にとっては、魅力的なフィールドです。

■大手旅行会社の海外支店情報

学歴にかかわらず比較的入社がしやすい

旅行業界は、他の業界に比べて学歴の壁が低い傾向にあります。

特に、旅行代理店や観光業に関連する企業では、経験やコミュニケーション能力が重視されるため、大卒でなくても活躍できるチャンスがあります。

実際、接客業務やツアー企画・販売といった職種では、人柄や対応力が評価されやすく、専門学校卒や高卒の人でも実力次第でキャリアを築くことが可能です。

資格を取得したり、現場での経験を積んだりすることで、学歴に関係なくキャリアアップができるのもこの業界のメリットと言えます。

出世をすれば、年収アップのチャンスもある

旅行業界は、一般的に給与水準が低めですが、管理職やマネジメント層に昇進すれば、年収を大幅に上げることが可能です。

例えば、大手旅行会社の部長クラスになれば、年収600万円~800万円以上になることも珍しくありません。

また、独立して旅行関連のビジネスを立ち上げる道もあり、成功すれば高収入を得ることもできます。

さらに、インバウンド需要の拡大やオンライン旅行事業の成長に伴い、新しいビジネスモデルを開拓することで、高い収益を得られるチャンスに挑戦ができる場合もあります。

実際のところ、旅行会社勤務でも家や車を買ったり、子どもを育てたりしている家庭は多いため、生活ができない!といったわけではないため安心してくださいね。

まとめ

旅行業界の給料・年収の実態について解説しました。

本記事で紹介した内容を改めてまとめると、以下の通りです。

まとめ・旅行業界の平均年収は「約393万円」
・産業別に見てみると、日本の平均「460万円」よりも低い

旅行業界はコロナ禍以降の旅行需要の減少や、ビジネスモデルそのものを理由に、年収が決して高い業界ではありません。

一方で旅行業界ならではのメリットも多く、旅行が好きな人、旅行を仕事にしたい人にとっては非常に魅力のある職場です。

旅行業界への就職・転職はお金だけでは測れない、様々な経験ができること間違いありません。

ぜひ本記事が、旅行業界への就職・転職を目指す方の役に立てば光栄です。

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