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日本は世界的に見ても観光立国としての地位を築いていますが、その一方で驚くべきデータがあります。
外務省が公表した内容によると2024年時点で、日本人のパスポート保有率はわずか17%にまで低下しており、極めて低い水準です。
この記事では、なぜ今これほどまでにパスポートの保有率が下がっているのか、そしてそれがもたらす社会的・経済的影響について、旅行業界の視点から徹底解説していきます。
2024年の日本人のパスポート保有率はわずか17%に低下

日本人の海外渡航が再び動き出すことが期待されていた2024年。
しかし、実際には日本人のパスポート保有率はわずか17%にとどまり、極めて低い水準を記録しました。
以下では、統計データを元にこの数字の真意に迫ります。
2024年に発行されたパスポートは約382万冊
2024年に日本で発行されたパスポート数は約382万冊でした。
これは、新型コロナウイルス流行前の2019年(約451万冊)と比べて約15%の減少となり、依然としてコロナ前の水準には戻っていません。
一方で、2023年(約353万冊)と比較すると約8.3%の増加を記録しており、わずかながら回復の兆しも見え始めています。
なお、パスポート保有率17%は、有効な旅券の総数を日本の総人口で割って算出されています。
30歳未満の若者がパスポート発行数の過半数を占める
2024年のパスポート発行データを世代別に見ると、30歳未満の若年層が全体の約過半数を占めていることがわかっています。
この背景には、留学やワーキングホリデー、国際的なビジネス人材への志向の高まりがあると考えられます。
特に大学生や新社会人を中心に、「将来的に海外での経験が必要になる」という認識が浸透しつつある点は注目すべき変化です。
一方で、40代以上の層では発行数の伸びが鈍く、世代間で海外志向に大きな差が生まれているのが現状です。
年代 | 人数 | 比率 |
---|---|---|
19 歳以下 | 871,191人 | 23.5% |
20~29歳 | 913,339人 | 24.7% |
30~39歳 | 477,188人 | 12.9% |
40~49歳 | 484,610人 | 13.1% |
50~59歳 | 473,047人 | 12.8% |
60~69歳 | 292,226人 | 7.9% |
70~79 歳 | 155,945人 | 4.2% |
80 歳以上 | 32,565人 | 0.9% |
計 | 3,700,111人 | 100.0% |
パスポートの発行数は年々減少傾向にある
パスポート発行件数の減少は、単年の変動にとどまらず中長期的なトレンドとなりつつあります。これは一時的な要因ではなく、構造的な背景によるものと見るべきです。
実際、パスポートの発行数は新型コロナウイルス流行をきっかけに急減したものの、その後も回復は鈍く、長期的には右肩下がりの傾向が続いています。
旅行業界の現場でも「更新せずに失効させたまま」という声を多く聞くようになり、必要性そのものを感じなくなった人が増えている印象です。
こうした状況を受け、旅行業界では若年層や新規取得者を対象にしたパスポート取得促進キャンペーンの実施が進んでおり、一部では補助金や割引特典を用意する自治体や団体も見られます。
日本人がパスポートを持たない主な理由5選

パスポート保有率の低下は、複数の心理的・経済的・社会的要因が絡み合っています。
ここでは、特に影響が大きいと考えられる5つの理由を取り上げ、それぞれの実情を旅行業界の視点から分析していきます。
物価高と円安の影響で海外旅行を控える人が増えている
ここ数年、円安の進行と物価高の影響により、海外旅行のコストが大幅に上昇しています。
特に為替レートは、以前に比べて1.5〜2倍の負担増と感じられることもあり、同じ旅行内容でも「割高感」が否めません。
航空券・現地の宿泊費・食事代すべてが高騰しており、気軽な海外旅行は「贅沢な娯楽」となりつつあります。
旅行会社の販売データでも、海外ツアーの動きは鈍く、国内旅行へのシフトが鮮明です。
日本国内の観光資源が豊富で海外に行かなくても楽しめる
近年、日本国内の観光地が再評価され、「わざわざ海外に行かなくても楽しめる」という価値観が広がりつつあります。
自然・温泉・グルメ・文化体験など、日本国内には多彩な魅力があり、地域観光の充実がパスポート保有の必要性を相対的に下げています。
特に地方自治体の観光プロモーションや地域通貨の活用、全国旅行支援などの施策により、国内旅行のハードルが下がったことも後押しとなっています。
旅行会社のカウンターでも、相談件数は圧倒的に国内旅行が多く、「次の休暇も国内で十分」という声は少なくありません。
島国という地理的要因で海外旅行が身近に感じられない
日本が島国であるという地理的特性も、海外旅行を日常的に感じにくい一因です。
陸続きの国境を持たず、隣国へ車や電車で簡単に移動できる欧州や東南アジア諸国と異なり、海外に行くには必ず航空機や船を利用しなければなりません。
この「距離感」や「手間」の心理的ハードルは意外に大きく、日常の延長線上に海外があるとは感じにくいのが実情です。
また、初めて海外旅行をする人にとっては、出入国手続きや文化の違いに対する不安も加わり、パスポートを取得するモチベーションを下げる要因となっています。
海外は治安が悪いというイメージを持つ人が一定数いる
一部の地域では実際に治安上のリスクがあるものの、メディアやSNSによる過剰な報道により、「海外=危険」というイメージが定着している面も否めません。
特に中高年層を中心に、スリ・詐欺・テロなどへの漠然とした不安を理由に、海外旅行を避ける傾向が見られます。
こうした印象は旅行代理店のカウンターでもよく聞かれ、「安心して行ける国がない」といった相談が寄せられることもあります。
実際には安全に旅行できる国も多いものの、リスク回避意識がパスポート取得を遠ざけているというのが現場の実感です。
語学力への不安から海外旅行に消極的な人が多い
言語の壁も、海外旅行への心理的ハードルを高める要因の一つです。
特に英語をはじめとした語学力に自信がない人が、海外旅行に対して不安を抱き、消極的になる傾向が強いです。
旅行中のトラブル対応や現地での買い物・移動など、言葉が通じないことへの懸念は、初めて海外に行く人ほど大きくなります。
最近ではスマホの翻訳アプリや通訳サービスも充実してきていますが、それでも「自分には無理そう」と感じて、そもそも海外旅行を選択肢に入れない人が少なくありません。
パスポート保有率の低下がもたらす影響3選

日本人のパスポート保有率が17%という低水準にとどまることは、個人の旅行機会が減るだけでなく、航空業界や観光産業、さらには国家レベルの国際競争力にも波及する深刻な課題を孕んでいます。
ここでは、その影響を3つの観点から整理し、業界および社会全体にとってのリスクを解説します。
国際線の需要減少による航空業界への影響
パスポート保有者が少ないということは、それだけ国際線を利用する潜在顧客が限られることを意味します。
実際、国内主要航空会社では、国際線の回復が遅れており、一部路線では運休や減便が継続中です。
特に地方空港では国際線の採算性が低下し、インバウンド需要頼みの運航が増えています。
航空会社にとって、日本人の出国需要は収益の柱のひとつであり、今後もパスポート保有率の低下が続けば、国際線ネットワークの縮小や、航空運賃の上昇など、利用者にも不利益をもたらす可能性があります。
海外旅行市場の縮小が観光産業全体に与える打撃
日本人の海外旅行需要は、航空業界だけでなく、旅行会社・空港関連企業・保険・両替サービス・メディアなど多岐にわたる産業に波及しています。
パスポート保有率の低下は、これらの業種にとって「市場そのものの縮小」を意味し、収益構造の見直しを迫られるケースも少なくありません。
特に中堅・中小の旅行会社にとっては、海外旅行商品の販売比率が高く、パスポート未取得者の増加は、長期的な経営リスクとなり得ます。
また、マーケットの縮小は、企業の新規投資やサービス開発意欲を鈍らせ、旅行業界全体の成長力を低下させる懸念があります。
グローバル人材育成の停滞と日本の国際競争力への懸念
パスポート保有率が低いということは、将来的なグローバル人材育成にとって大きな課題です。
留学や国際インターンシップ、ビジネス出張など、海外経験は多様な価値観を学ぶ貴重な機会ですが、パスポートを持たない層が増えれば、そうしたチャンス自体が閉ざされかねません。
結果として、語学力や異文化理解、国際的な交渉力を備えた人材の育成が停滞し、長期的には日本の国際競争力や外交力の低下につながる恐れがあります。
まとめ
2024年のデータが示すように、日本人のパスポート保有率は17%という厳しい現実です。
その背景には、円安や物価高といった経済的要因に加え、国内観光資源の充実、海外旅行への心理的ハードルの高さなど、複合的な理由が存在します。
旅行業界としても、日本人が再び海外に目を向け、世界との接点を持つための仕掛け作りが求められます。
個人レベルでも海外渡航のメリットを再認識し、グローバルな視野を広げていくことが国際社会で生き延びていくためには重要です。